■あらすじ

  ○登場人物紹介

・黒猫フーコ
  斎木朱美が飼っている子猫
  ふとしたことで,竹生島に住みつく
・斎木朱美
  日吉大社の神官のひとり娘
  龍笛が得意
  アメリカのバークリー音楽大学へ留学
  ジャズ奏者  
・林盛太郎
  彦根に育ち,彦根城高校に学ぶ
  洞窟に興味を持ち,地質学者になる
  近江経済大学 地質学教授
・林賢次郎
  盛太郎の父親
  近江経済大学 土木工学 教授
・白鳥美穂
  旧姓奈須美穂で奈須善行の娘である。
  京都の大学で,経済学部観光産業学科で学ぶ
  長浜市役所の商工観光課の職員
・奈須和茂
  小学校教員を定年して,西野水道顕彰会の会長
  林盛太郎と交流
・奈須善行
  和茂の息子で高校の社会科の先生
  琵琶湖特有の「丸子船」の再現に熱を入れ,自分で作ってしまう
  定年を機に,丸太船を操り,竹生島へ観光案内をしている

  ○次に,あらすじを紹介しておこう

  第1章 波を奔る(1980年〜  昭和55年〜 )

黒猫のフーコは生まれて間もない子猫である。持ち主は,斎木朱美と云う大津の坂本にある日吉大社の神官のひとり娘である。
小学4年生になった朱美は,龍笛の魅力にとりつかれ,浜大津まで出掛けて笛を吹いている。黒猫のフーコもそれについて行っていた。ある秋の日,フーコは竹生島行きのインタラーケンUに潜り込む。その日は悪天候で海が荒れ,フーコも船酔いして竹生島で下りてしまう。ところが,定期遊覧船の最終日であって,竹生島に取り残されてしまうことになる。朱美はいろいろ探し回ったが黒猫のフーコは見つからず,そのまま日が過ぎてゆく。
朱美は中学生になる。音楽クラブに入り,横笛奏者の藤舎完峰を紹介され,その演奏の凄さに圧倒される。完峰先生は朱美が浜大津で笛を吹いていたことを知っている。完峰先生は母と同じ師匠の下で能管を習った人であった。朱美は完峰先生の指導を受け笛の上達をする。
黒猫のフーコは竹生島に住みつき,東西南北から聞こえる違った音色の笛のような音に朱美の龍笛の音色を思い出す。

  第2章 穴を掘る(1985年〜 昭和60年〜 )

林盛太郎は彦根市内に住む中学生で,自宅の庭を掘り返し,何か宝物が出てこないかと探す。掘った穴そのものを見ながらその穴が世界に通じているような不思議な感覚を覚える。
父に湖北にある西野水道へ連れて行ってもらう。そこで奈須和茂と云う老人と出会う。奈須は小学校の教員を定年退職して西野水道顕彰会の会長をしている。西野水道は江戸末期に山腹を穿って排水用にくり抜いた岩穴で,5年掛かりで228mのトンネルを貫通させたものである。井伊大老からもその偉業を誉め讃えられたと云われている。
盛太郎は,奈須が話す西野水道の説明を聞き入る。奈須の話が竹生島の湖底洞窟にまで及ぶ。最近洞窟に興味を持ちだした盛太郎は小学生のときに連れて行って貰った河内の風穴の話を持ち出す。鍾乳洞の関連から竹生島の洞窟も同じ種類の可能性のある話になる。
奈須は葦笛を盛太郎に紹介する

  第3章 川が動く(1987年〜 昭和62年〜 )

高校生になった盛太郎は洞窟に興味を持つようになり,草津にある天井川へ見学に行く。その不思議な感動を奈須和茂に伝えると近くに田川カルバートと云う究極の天井川があるから見に来るように誘いを受ける。夏休みを利用して,虎姫から車で15分ほどにある高時川(姉川の支流)と田川の交差するところにある。田川カルバートは三重のカルバートになっていた。折角ここまで来たから見せたいものがあると,丸子船を見せて貰う。おも木と云う太いスギの丸太が取り付けられた珍しい船で,これを操っているのが和茂老人の息子の善行である。市の教育委員会からの依頼で,休日には竹生島まで航行させている。善行はいろいろな異変に気づき始めていた。西野水道の先で葦笛を吹くと,竹生島から猫の鳴き声が返ってくることも感じていた。
高校3年生になった春休みも盛太郎は洞窟探検を続けていた。「甌穴」と云う飛騨川の河原にある天然記念物を見に行く。小学生の時訪れた河内の風穴以来,自然の浸食や人工的に作った穴やトンネルを調べることに非常に興味を抱いていた。父がテレビ局の仕事で琵琶湖疎水の記念番組に出演するときに,高校生の盛太郎の感想も聞きたいと番組に参加する。

  第4章 湖が沈む(2002年〜 平成14年〜 )

長浜市役所の商工観光課の白鳥美穂は課長から,町おこし事業の黒壁スクエアを側面から補助するイベントを開発する仕事を命じられる。全く新規ではなくどこかでやった実績があり,且つ金のかからない,小規模な地味なものにしろと云う難しい条件を付けられている。いろいろ試みるが何かと課長から小言が来る。その次には,竹生島観光の見直しと強化の仕事を命ぜられる。父善行が竹生島へ行くのに連れて行ってもらってヒントを探す。竹生島で結婚式を挙げる企画を立ち上げる。
黒猫のフーコの気持にさざ波が立ち始めたのは白鳥美穂が善行と頻繁に竹生島を訪れるようなってからで,美穂の後ろ姿に朱美の面影を見出してついて廻るようになっていた。
BSテレビの特別番組の企画が持ち上がり,「沈む」をテーマに竹生島を中心に展開することになった。そこに斎木朱美の「湖笛沈影」の生演奏をすると云う企画だった。そこに林盛太郎教授も加わる。

  第5章 笛が鎮める (20XX年〜 平成YY年〜 )

特別番組放送の3月中旬の日曜日。
パート1(8時から20分)。8時から大津の坂本で,斎木朱美と林盛太郎教授の二人からスタートした。
二人はヘリコプターに乗り込み琵琶湖上空を北上し彦根まで。盛太郎の実家の話題で穴を掘った話をする。
パート2(11時から20分)。丸子船に乗った斎木朱美と林盛太郎教授が,竹生島の北側から葛籠尾崎を望み,湖底遺跡に触れながらカワウ被害の甚大な北斜面を映す。林教授が打合せと違う大きな時間の流れの話を始める。教授の地質学的な話に合わせ水中カメラマンが湖底洞窟の内部を映し出している。そこに変化が見られる。朱美は葦笛を取り出し,教授と船頭の奈須に同じものを渡し,三人で「故郷」のメロディーを奏でる。洞窟の断崖で朱美を見ていた黒猫のフーコが葦笛を聞いて騒ぎ出し,それに驚いたカワウが数万羽一斉に飛び立ち,空が真っ黒になった。
パート3(15時から20分)。斎木朱美カルテットの演奏で始まる。朱美だけは繋留されている丸子船の上で演奏をする。最後の10分になり船を移動して,亡くなった母の笛が沈んでいる洞窟の前で「湖笛沈影」を演奏する。カワウの大群が空に群がる。
それから竹生島全体に異変が始まる。朱美は黒猫フーコと再会を果たす。

竹生島の異変は続く,どうなったかは・・・。